テレビや新聞はブルーカーボンをどう伝えているか?日本のマスメディア報道の内容分析(桝、阿部康)

ブルーカーボンは、海の生態系が二酸化炭素を吸収・貯留する仕組みとして注目されています。その仕組みや課題は、一般の人々にどのように伝えられているのでしょうか。本研究では、日本のテレビ番組29本と新聞記事26本を分析し、ブルーカーボンに関する報道内容を専門家の視点から評価しました。その結果、多くの報道がブルーカーボンの効果を伝える一方で、仕組みや課題、科学的な不確実性については言及が少なかったことがわかりました。適切な科学情報発信を実現するには、研究者、行政、メディアの協力が重要です。

研究担当者

桝太一(ハリス理化学研究所)、阿部康人(社会学部メディア学科)

研究の背景

近年、気候変動対策の一つとして、海洋生態系が吸収・貯留する炭素であるブルーカーボンが世界的な注目を集めています。日本は長い海岸線を持ち、ブルーカーボンの活用が期待できます。海洋政策や環境保全を考えていくうえで、ブルーカーボンについて正しく理解してもらうことが重要です。そこで本研究では、日本の主要なマスメディアがブルーカーボンをどのように報道しているのかを分析しました。

研究内容

本研究では、2023年3月から2024年8月までに放送・掲載されたテレビ番組29本、新聞記事26本を対象とし、ブルーカーボン研究の第一線で活躍する研究者の協力を得て、次の5つの観点を評価基準として分析しました。

  1. ブルーカーボンの仕組みが説明されているか
  2. 海洋植物が減少している現状と原因が説明されているか
  3. 実際の海域の事例が紹介されているか
  4. 数値データが根拠として示されているか
  5. 課題やリスクも説明されているか

明らかになったこと

多くの報道は「地球温暖化対策として有効である」という点を紹介していましたが、炭素がどのように海に蓄積されるのかという科学的な仕組みまで説明している例は限られていました。 また、ブルーカーボンのリスクや限界について言及した番組は確認されず、少数の新聞記事が扱うのみでした。 一方、実際の海域や地域の取り組みが紹介されるなど、ブルーカーボンを身近な問題として伝える工夫が見られました。

テレビや新聞では、ワカメやコンブなどの海藻を中心にブルーカーボンが紹介される傾向がありましたが、国際的には(本論文執筆時点では)海藻による効果は議論が続いているところでした。

本研究では、科学的に正確でバランスの取れた情報発信を実現するには、研究者、行政、メディアが協力することが重要であることを示しました。

論文情報

Masu, T., & Abe, Y. (2026). Conveying blue carbon as a scientific concept: A content analysis of Japanese television and newspapersMarine Policy186, 107028.